おそらく、良い返事はもらえないだろう―。
今の自分が出せるものは全て出した。でも、彼女には届かなかった。彼女にとって、自分は魅力的な男たり得なかったのであろう。
出会い
思えば、奇跡的だった。飲み会帰りの金曜、すれ違い様に彼女が視界に入った。そして、すぐ振り返って彼女に声をかけてしまった。声をかけた理由と、この後一緒に一杯付き合って欲しい旨を伝えた。
そして、なんと(渋々ながらも)付き合ってくれるという。彼女は、笑顔が素敵で、今まで出会ってきた女性で1番と言えるほど可愛らしい女性だった。
1軒目、2軒目と色んな話で盛り上がる。新卒の社会人である事や、これから就く仕事の事、少し前に別れた彼氏の話をした。
そしてこの日、彼女の部屋まで送っていった。少しの駆け引きのあと、彼女は僕を部屋まであげてくれた。しかし、翌日朝から大事な予定を控えていた僕は、少しばかりの承認欲求を満たしてタクシーで自宅まで帰った。
再会するまで
出会った日、どう考えても良くない行動をした僕に対して、彼女は連絡をくれた。あの日、無理やり取り付けた、一緒に飲む予定を断るLINEだ。そこから、数ラリーをしたあと、返信はなくなった。
一週間経った後、「仕事おつかれ!」と、再度連絡をしてみた。新社会人の彼女にとって、4月に入ってからの一週間が過ぎたあとだ。一縷の望みを抱いて、返信があることを期待していた。
そしてすぐ、彼女は返事をくれた。
やり取りが盛り上がった後、電話をかけ、次に会う約束をした。
再会の日
そして、待ちに待った再開の日。緊張を隠しながら、待ち合わせ場所で彼女を待っていた。少し記憶が薄れつつあった中、現れた彼女は、目を見張る可愛さだった。ますます高鳴る鼓動を誤魔化すように喋り、予約していたお店へと向かった。
カウンターの席で、会ったその日より深い話をする。学生時代の話、過去の恋愛の話、家族の話―。二人の距離も近づき、より親密になれたと思う。
店を出て、手をつないだ。彼女は拒否することなく、手を繋いでくれた。
そして、提案した。
「ウチに来ない?」と。
「なんで?」と彼女。
「もう少し、一緒に飲んで話をしたい。」
「・・わかった。」
そんなやり取りをして、タクシーに乗った。
「私なんでここにいるの〜」と言いながらも、一緒に部屋に入る。部屋に入ると、ソファの端っこに行ってしまうが、ワインを持ってきて、先程のお店の続きで話をする。しばらく楽しく飲みながら話をした。
そして、一夜を共にした。
抱いていた不安
翌日、お互いに休みだったために、水族館に行くことを提案した。彼女もそれに応じてくれ、一度家に帰った後、すぐに合流した。お昼ご飯を食べ、水族館では手をつないで、恋人さながらに楽しい時間を過ごせた。そして、夕食を食べた後、この日も翌日の朝まで一緒に過ごし、解散した。
僕はすでに彼女が好きになっていたが、違和感を感じていた。彼女の、僕への関心が薄いことに。その日以降も、LINEや電話で連絡を取り合うが、不安を拭えず、日々を過ごしていた。
告白
彼女を気持ちが間延びすることを恐れた僕は、デートに誘うとともに、大事な話をしたいと告げた。
良い返事が無かった時は、もう連絡するのも、会うのも止めるつもりであることを告げ、告白をした。
しかし、彼女の答えは"保留"だった。承諾してくれないのは、なんとなくわかっていた。
彼女に、一週間で答えを出して欲しいと伝えたが、答えはわかっている。
思えば、彼女の一挙手一投足にヤキモキしながら、過ごした一ヶ月だった。彼女を魅了するため、色んな事を考えた。彼女からの連絡にも、肥大する彼女への思いと裏腹に、どうすべきかを考えて冷静に返信をしたつもりだった。しかし、届かなかった。僕は、まだまだ足りていない。この経験が、後に繋がると信じ、前を向いて進みたい。
-この物語はフィクションです-