1.はじめに
皆さん、最近ゲームはしているだろうか。少し前からだが、近年はスマホゲームが台頭し、カフェや電車の中でもゲームをしている人をよく見かける。僕はいわゆるゲームの類いは基本やらないようにしているが、長期休みがあるときなんかには、ふと昔のゲームを引き出しから引っ張ってきて、友人と一緒にやったりすることがある。
そこで、本日はこのゲーム産業のトップとして長きに渡って君臨してきた、任天堂という会社の故・岩田社長の経営哲学と信念について、紹介したいと思う。
僕の人生を振り返ると、任天堂のゲームは常に生活の一部にあった。記憶にある頃だと、小学生前の頃からファミコンで遊んでいたし、熱狂的なポケモンブーム、スーパーファミコンやニンテンドー64の不朽の名作の数々も遊んできた。大学生になってもよくサークルの部室で授業をサボってゲームをしていた。
ファミコン、スーパーファミコン、ニンテンドー64の後も、DSやWiiとヒット作を飛ばし、昨今のNintendo Switchの人気も皆さん知るところである。
この任天堂の活躍の裏側には、長年トップとしてリードしてきた岩田社長の功績が大きく関わっている。2015年に55歳という若さで亡くなってしまったと聞いた時、ショックを受けた。ブログを書き始めた時から、いつか岩田社長の記事を書きたいと思っていた。そんな岩田社長が、任天堂をどのように引っ張ってきて、世界中を魅了する企業となったかを語りたいと思う。
2.任天堂・岩田社長とスマホゲーム
1.社長就任
岩田社長は、元は生粋の天才プログラマーとして活躍していた。任天堂の仕事を請け負うようになったHAL研究所という会社で社長に就任した後、経営手腕を買われ、任天堂に入社した。その後、山内 博社長から指名を受け、2002年に任天堂の代表取締役社長に就任した。山内社長から引き継いだ後、DSやWiiのヒット作を世に送り出した。
2.スマホゲームの台頭と任天堂の苦悩
話は少し飛ぶが、2016年7月、海外でPokemon GO※がリリースされたのを皮切りに、日々その熱狂ぶりがニュースで取り沙汰されていた。日本でリリース後も、公園などに多くの人が集まり、ポケモンの出現する場所にぞろぞろと人が移動する光景が各地で見られ、社会現象となったのは記憶に新しい。※Pokemon GOは、正確には任天堂株式会社ではなく、米ナイアンティック社と株式会社ポケモンの共同開発のゲームアプリである
しかし、Pokemon GOのリリースに踏み切るまで、任天堂には苦悩があった。
遡ること余年、ガンホーやミクシイの業績が爆発的に伸びていた。そう、パズドラやモンストといった、スマホをプラットフォームとした課金型モデルのゲームが流行していた。ガチャと呼ばれる、レアアイテムを手に入れるための抽選方式が採用され、ギャンブルに似た射幸心を煽るその特徴から、親のクレジットカードを使って課金する子供すら現れた。運営する会社としては、それまでの売り切り型のゲームとは異なり、ユーザの課金額が毎月業績に反映するというビジネスモデルだ。
そんな課金型スマホゲームが台頭する中、任天堂は当初、頑としてスマホゲームに参入しなかった。業績も低迷していたが、スマホゲーム参入に踏み切ろうとしなかった。
任天堂の2009年-2017年の株価
数年の業績低迷を経て、2015年、任天堂のIPを活用したスマホ向けゲームをDeNAと共同開発すると発表した。ついに任天堂が課金型ゲームに舵を切るか?となったが、そうではなかった。後にわかることだが、これはスーパーマリオランと呼ばれる、横スクロールするマリオがコインを集めるという売り切り型のゲームであった。
岩田社長は、こんなことをインタビューで述べている。
月額課金制のビジネスは、娯楽には向いていないと考えています。われわれのお客さんは、小さなお子様やあまりITリテラシーの高くない方と幅広い。その人たちにとって、気がついたらおカネがたくさんとられているという状況にならないようにこれまではやってきました。
引用元:WiiUは、一家に一台・家族全員が遊ぶデバイス、ソフト会社との連携も強化--岩田聡・任天堂社長
ある意味、インターネットやスマートデバイスに飲み込まれたいろんなコンテンツというのは、価値の維持でみなさんすごく苦労をされている。私たちはビデオゲームを健全に発展させていくためにも、価値の維持にはこだわっているんです。
私は喜んでいただける人が家族のなかで、ひとりより2人、2人より3人、3人より4人、できることなら全員。ゲームがあってよかったねぇと、みんなにこにこしてくださったら、これ以上幸せなことはないんです。
スマートデバイスってやり方を間違えると、非常に大きなリスクを抱えることにもなる。(中略)30年かけて積み上げてきた知的財産権(IP)の価値を毀損してどうすると思っていましたから。
業績が落ちれば、株主からも相当叩かれ、経営の舵取りや、自分が下した判断が本当に正しいのか、迷っただろう。しかし、岩田社長は信念を曲げず、任天堂が持つ社会意義や自らの経営哲学を貫いてきた。
3.スマホゲームの低迷とハード型ゲームの再起
その後、任天堂のIPを活用したPokemon GOがリリースされるわけだが、ここにも任天堂の経営理念が垣間見える。ガチャなどの課金を煽るような仕組みになっておらず、『より多くの人が外出してつながり、新しい発見をし、世界の美しさに気付いて、より良くしていく』という考えをコンセプトとし、あくまで現実世界の延長(AR)という枠組みでIPが用いられた。ゲームを通じて、世の中をより良くしていくという思いが感じられる。
そして、今、スマホゲームを展開してきた多くの会社は壁にぶつかっている。業績は少し前をピークに下がり始め、今日本のスマホゲーム市場は飽和状態になりつつある。市場全体は成長を止め、各社がパイを取り合っている状況だ。
国内のスマホゲームメーカー12社の四半期売上高の推移です。合計すると、2000億円弱の規模となっていることがわかります。https://t.co/Z6fZ5cznUZ pic.twitter.com/rWlqZd0Lll
— Stockclip (@stockclip) November 15, 2017
結果として、目先の課金型スマホゲームの収益に惑わされず、長年築いてきた自社IPの価値を毀損させず、長期的な目線で会社の方向性を定めたその判断は、正しかったと言っていいのではないか。その後、従来のハード型ゲーム機である、Nintendo Switchが発売され、現在も好調を維持している。これは、コードNXとしてDeNA提携と同時期に、並行で開発が進められていたのだ。スマホゲームだけに囚われず、これまで売り出してきたハード型のゲーム機をさらに進化させ、世に出す手腕・彗眼は、もはや形容できない凄さだ。
3.最後に
僕も社会人になり、中堅層に位置する年齢になった。仕事をする上でも、色々な判断をする場面に出くわす。正解がない中、自らのプロジェクトに対してどうアプローチし、上司を説得させながら進めるべきかを常に考える。とりわけ、大企業の中にいると、無駄だと思うことは多々あるし、理不尽なことも乗り越えていかないといけない。色々な迷いが出てくることもあるが、岩田社長のように、自らの信念を失わずに前に進んでいきたい。
岩田社長のインタビュー記事が下記のURLにまとめられているので、是非見て欲しい。岩田社長は、抽象的な事象も平易でわかりやすい言葉で表現してくれる。そこも社会人として求められる必須のスキルであり、見習わないといけない部分だ。
【永久保存版】任天堂岩田聡社長インタビュー記事を1980年代から総まとめ
最後に、岩田社長のトリビュートアニメを紹介して終わろう。トリビュートアニメとは、作家やアーティストに尊敬の念をこめて作られるアニメであり、2016年に開催されたアメリカのゲーム開発者カンファレンスにて公開された。
僕は、テレビゲームという素晴らしいコンテンツを生み出してきた任天堂、および岩田社長を心から尊敬している。世界中を魅了し、人々を幸せにしてきたその功績を称え、少しでも社会に貢献できる人間になれるよう頑張っていきたい。